大判例

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東京高等裁判所 昭和34年(ネ)1078号 判決

被控訴会社が挨拶状を取引先等に配布したことは同会社の認めるところである。しかし、証拠を綜合すると、次の事実が認められる。すなわち、訴外長谷川美貴はかねてセレナ電気株式会社に対し約千五百万円の貸金債権を有していたが、右会社の手違いからその支払を受けることができなくなつたので、代物弁済により、右債権の担保の目的となつていた同会社所有の工場建物、土地、機械設備等の所有権を取得したが、なおすべての弁済を受けるに至らなかつた。他方、セレナ電気株式会社の従業員その他下請会社等からも、長谷川に対して右会社の営業を継続して同人らの窮状を救つて貰いたい旨の要望もあつたので、昭和三十三年五月一日長谷川は被控訴会社を設立し、同年六月上旬頃セレナ電気会社の従来の取引先等に対して本件挨拶状を送付した。以上のような事実が認められるのである。

ところで右挨拶状の内容は、今般五月一日をもつてセレナ電気株式会社の業務全般を引き継ぎ、製造設備、人員の増強を実施し、全員清新の気をもつて生産に邁進し得る運びになつたから、挨拶を述べるとともに、引継について指導と配慮を受けたことをお礼申し上げるというのであり、特に右会社の営業によつて生じた債務を引き受ける旨の記載はない。もつともこのような場合、その趣旨が社会通念上からみて、営業によつて生じた債務を引き受けたものと債権者が一般に信ずるようなものであると認められるときは、債務を引き受ける趣旨であると解することもできようが、右記載をもつて直ちに被控訴会社がセレナ電気株式会社の営業によつて生じた債務を引き受けた旨表示したと解することは困難である。以上のとおりであるから、本件挨拶状は一般の挨拶状にすぎないものというべきであり、従つて、右挨拶状の配布が商法第二十八条にいわゆる広告に該当する旨の控訴人の主張は採用することができない。

次に、控訴人らは、本件挨拶状を控訴人らに送付することにより、被控訴会社はセレナ電気株式会社の控訴人に対する債務を重畳的に引き受けた旨の意思表示をしたものであると主張するが、右挨拶状をもつて控訴人主張のような債務引受をしたものと認定することができないのは前記説明のとおりであるから、右主張も採用できない。

以上のとおりであるから控訴人らの請求は失当であるところ、これを棄却した原判決は相当であるから、本件控訴も理由がないとしてこれを棄却した。

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